「ゆっくりランニングガイドブック」
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となりの人と話をしながらゆっくり走ることなら誰にでもできる。 脈拍数でペースをコントロールする安全・快適.高効果なゆっくりランニングをあなたも体験してみませんか? |
Q1.
ゆっくりランニングとはどのようなものですか?
●ランニングとはゆっくり、長く、楽しむもの
かつて日本ではランニングとは歯をくいしばって頑張ることであり、必死に走る苦しみに耐えることによって心も身体も鍛えられることができるものだと考えられていました。また、走ることは時には教育上の罰の一つとして使われたりもしました。そのため、ランニングはイヤなものだという印象が誰にでもあるでしょう。
しかし、約30年前にアメリカで起こったジョギングやランニングのブームが日本に伝わり、それまでの考え方と異なるゆっくり、長く、楽しみながら走るというスタイルが次第に定着するにつれて、ランニングのイヤなイメージは徐々に薄れ、今日ではランニングは人口500万人ともいわれる大衆スポーツへと成長したのです。
●会話を楽しみながら走り続けられるスピードが大切
「ゆっくりランニング」とは、頑張れば歩いてもいける位の速度(100〜200m/分)で楽しむランニングのことです。これは即ち、個人が最も長く走り続けることができる最も効率のよい速さで走ることで、例えば仲間との会話を楽しみながら走り続けられるスピードでのランニングということになります。
「ゆっくりランニング」は、呼吸のリズムが自然な状態になり、これにより大脳の快感神経が刺激され、走る人を楽しい気分にさせてくれます。このような感覚は”ランニング・ハイ”と呼ばれ、多幸感ともいわれています。
●”ランニング・ハイ”を呼ぶ「ゆっくりランニング」
”ランニング・ハイ”を感じるランニング・スピードは脈拍数でいうと100〜130拍/分位の運動負荷です。このような速さの「ゆっくりランニング」ならば脚や心臓にも適度な刺激を与え、ランニング後には心地よい汗を感じ、満たされた気分に浸ることができます。 今日の大衆ランナーを魅惑してやまないのはこの”ランニング・ハイ”と呼ばれる快感であり、それは走ることを楽しむようにして走る「ゆっくりランニング」によって得られるものなのです。
Q2.
なぜゆっくり走るのですか?
●ゆっくり走らなければ、走り続けることはできない
ランニングを始めた理由の中で最も多いのは、健康や体力の維持・増進で、続いてウエイトコントロール、友人や医師に勧められて、の順となります。これらの健康志向の目的を成し遂げるためには、少なくとも20〜30分は続けて走らなければなりません。
実際に全力で走ってみるとわかることですが、子供の頃はあんなに走り回っていた自分が全力で走れば今ではものの5分も走り続けられないことに気が付きます。これくらいなら走れるだろうと頭でイメージする速さは実力よりもかなり速いものです。
ランニングを始めたばかりの皆さんに大切なことは、ある程度の長い時間を走り続けることであり、走り続けるためには頭で考えるスピードよりもかなりゆっくりと走ることしか方法はないのです。
●ゆっくり走ることで眠っていた自分が目覚める
またゆっくり長く走ることは結果的には呼吸機能や心臓血管機能に適度な刺激を与え、さらに適度な速さでの呼吸や着地の際生じるゆるやかなリズムは大脳を活性化させる刺激を与えてくれます。
このようにゆっくり走ることは副次的な効果も大きく、「ゆっくりランニング」を一週間に二回以上行うようにすれば全身の血液循環がスムーズになり、抹消の筋肉への酸素の供給が容易となって運動時や就労時の疲労感が軽減されます。
●「ゆっくりランニング」は自分改革への第一歩
「ゆっくりランニング」を生活の一部に取り入れることができれば、次第に何事に対してもより活動的な生活へと皆さんの生活スタイルそのものが大きく変化することでしょう。
自分に合ったペースでゆっくり、長く、楽しく走る「ゆっくりランニング」とは、人間が本来持ち合わせている本質的な生体機能を活性化させ、眠っていた自分自身を揺り動かし、日常生活における生活スタイルや人間関係などをもよりよいものへと変革させる第一歩なのです。
Q3.
走る前にはどのような準備が必要ですか?
●シューズは衝撃を和らげるタイプを選ぶ
まず、シューズが必要です。足は夕方最も太く大きくなっていますので、シューズを選ぶときには夕方にスポーツ用品店に行き、両足にシューズを履いて歩いて見ます。その時、フィットするシューズがあればよいのですが、もしどちらにしようかと迷った場合には大きめのものを選ぶようにします。
シューズにはジョギング用、ランニング用、レーサー用等の種類があります。ランニングを始めたばかりの皆さんにはジョギング用の比較的靴底が厚く、弾力性に富んだものがよいでしょう。ジョギングの場合でも着地の際には体重の約2倍の負荷が支持脚にかかります。この衝撃が少しでも多く和らげられる様な衝撃吸収タイプのシューズが最適でしょう。
●ランニング専用ウオッチは大切な味方
ランナーの中には会社に付けて行く様な革バンドタイプのアナログ式腕時計を付けて走っている人も見かけますが、走るときにはやはりランニング専用のウオッチを付けたほうが便利です。
最近では「セイコーパルスグラフ」の様にランニング時の脈拍計測機能を搭載した優れものもありますが、ランニングウオッチの基本はラップ(区間)タイム計測が出来るストップウオッチ機能、防水、夜間に便利なバックライト付きであることなどが大切です。後はカタログ等を参考に自分の好みに合うものを選びましょう。
●ウエアは調整できるものを選ぶ
最後にウエアです。厚さ寒さに応じて服装を変えなければなりませんが、基本的には余分な汗をかかないように脱着を頻繁に行って調整をします。そのため、ランニング中でも脱着が容易にできるもの、また練習などでは車道や歩道を走ることも多いですから、こうした際には安全確保のために目立つカラーの服装がよいでしょう。
最近はウエアのセンスに溢れたランナーが増えてきました。ウエアを楽しむゆとりが出来れば、あなたもジョガーの仲間入りです。
Q4.
どれくらいのスピードで走ればよいのですか?
●自分の身体で感じる運動の強さを目安にして走る
一流ランナーは1kmを何分で走るといったスピードやタイムなどの物理的な数字に縛られながら走っています。それは彼等が能力の極限を要求されるからです。ビギナーの皆さんは彼等の様にタイムにこだわる必要はありません。皆さんには自分の身体で感じる運動の強さでスピード管理をしながら走ることをお勧めします。具体的にはランニング時の脈拍数をスピードメーターにして走るのです。
●ランニング時の脈拍数があなたのスピードメーター
表1はスウェーデンのボルグ博士が考案した主観的運動強度のスコアに対して脈拍数がどの程度になるかを年齢別に示したものです。
ビギナーの場合、感じる運動の強さが「かなり楽である」あるいは「楽である」と感じるスピード=脈拍数で走るようにしましょう。例えば、20歳代の人であれば脈拍数が約100〜130拍/分に相当します。実際に走って「ややきつい」と感じる様であれば速すぎます。 この「ゆっくりランニング」のペースは人によって異なりますから、表1を参考にあなたの目標ペースを割り出してみてください。
Q5.
ゆっくり走るためのコツは?
●まずは歩きから始めてみる
まずは歩いてみて下さい。歩き始めたら徐々に少しずつ速く歩くようにします。そして普段の歩くスピードよりも速く歩くようになったら自然な感じで走り始めてみて下さい。この時、ももが挙がりすぎたり、爪先着地になっていませんか。重心の上下動を少なく、かかと着地を心がけゆっくり脚を動かして走って下さい。
最初のうちはゆっくり走る感じがつかめず、上下動の大きい走り方になりがちです。歩きに近い走り方は着地の際に衝撃が少なく、結果的にはビギナーに多い足関節や膝関節の障害、脛骨(むこうずね)の過労性骨膜炎や足底筋膜炎(土踏まずのアーチを支えている筋膜)等の障害を防ぐことができます。
●呼吸は意識せず自然なリズムを心がける
呼吸はあまり意識をせずに自然なリズムで行うのがベストです。経験を積むことによって呼吸のリズムと脚のリズムが次第に合ってきます。どうしても呼吸でリズムを取りたい人は「スウスウ」「ハッ」のリズムが良いでしょう。この場合もあせりは禁物です。あくまでもゆっくりリズムを心がけてください。
●リラックス、リラックス
ゆっくり走るための最大のコツは、リラックスしながら走ることです。リラックスした走りは美しい走り方と走ることを心から楽しもうとするエンジョイ精神から生まれてきます。
まずは上体を大地に対して垂直に保ち、かかと着地を心がけ、上下動を小さく抑えた経済的な美しい走り方をマスターしましょう。あとは走ること自体を楽しむ、走る仲間との会話を楽しむ、走る風景や季節の変化を楽しむエンジョイ精神を高くもつことです。
Q6.
毎日走らなければならないでしょうか?
●まずは週に2日は走る時間を作る
走り始めたばかりのあなたはまず週に2回は走る時間を作るようにしましょう。まずは走ることに身体を馴れさせるようにすることが大切です。慣れてくるにつれて週3回、週4回と走る回数を増やしていきますが、週に5回が上限です。
走る回数を増やす際の目安は、翌日に疲労感を残さないことです。それは翌朝めざめた時に気分爽快であればOK、起床の時に努力を要するようであれば潔く走らないようにします。あるいは、朝めざめた時の脈拍数が普段より10拍/分以上高い場合はまだ十分疲労が回復していないと判断しなければなりません。
●慣れてきても週に2日は休む日を作る
大衆ランナーと呼ばれるヒトは週2回は休養日を設けましょう。休養日には走ることを忘れ、気分を換えて歩いてみることをお勧めします。また、走る時にあまり使用しない上体の筋力トレーニングを行うこともバランスの取れた身体づくりに有効です。
ランニングの際に使われた筋細胞が機能を失い、新しい筋細胞が再生される時にその刺激に適応した筋細胞が形成されます。したがって、週7回毎日ランニングを続けると筋の再生が不十分となり、かえって疲労を蓄積することになります。
週2回の休養日を設けることによって筋の再生が促進され、故障の原因ともなりやすい疲労の解消がはかられ、筋肉だけでなくこころのリラックスにも役立ちます。
Q7.
どんな所を走ればよいでしょうか?
●安全、やさしい、飽きないがコース探しのキーワード
ジョギングやランニングは“いつでも、どこでも、だれにでも”できる条件を満たした数少ない運動の一つです。しかし、簡単に“どこでも”といっても、飽きずに安全で、しかも効果的であるという、より高度な欲求を満たす場所となると限られてきます。
まず(1)交通や犯罪の面から安全であること、次に(2)足や脚にやさしいこと、(3)景色が変化に富み飽きないことを条件にし、しかも(4)自宅や職場に近い所を探してみて下さい。 いつも同じコースだと飽きますので、周回コース、往復コース、公園やゴルフ場での気ままなコース、陸上競技場のトラックなど、幾つかのホームグラウンドを持っていることが理想です。
●夕食後は走らない
コースはねんざなどの心配がないように整備されていることが必要最小限度の条件です。少々硬いアスファルトでも弾力性に富むシューズさえはいていれば心配はいりません。暗くなってから走るのは安全性を考えて避けたほうが良いでしょう。特に夕食後のランニングは絶対に避けるべきです。走ることによって覚醒中枢が呼び起こされ、寝つきが悪くなったり、深い眠りができなくなります。できたら夕食前、できなければ早朝のランニングをお勧めします。
●通勤、昼休み、会社の階段も走る!走る!
通勤ランニングや昼休みのランニングも確実に時間が確保できます。ただ、走った後シャワーを浴びられる設備がほしいですネ。
その他、日常の運動不足は職場などでエレベーターやエスカレーターを使わずに階段を利用することで解消できます。カナダ人の私の知人は建物の一番遠くにあるトイレを利用することによって運動不足を解消していました。
Q8.
長く続けるためのコツは?
●ゆっくり走ることの楽しさ豊かさを忘れないこと
ヒトを動かす動機には、(1)利益、(2)名誉、(3)恐怖(命令や罰)、(4)情などがあります。ランニングを長く続かせるエネルギーは何でしょうか。誰でも苦しいことは長続きしませんが、楽しいことは夢中になります。走ることが楽しいからこんなに多くの大衆ランナーが長く続けているのです。確かに無理をして速く走ることは苦痛を伴いますが、ゆっくり走れば走っている間に仲間、自然、自分との対話を楽しむことができます。走った後の満足感、充実感、完遂感、そしてのどの渇きを癒すビール、ジュース、コーヒーそして水のおいしさを味わうことができます。こんな感覚的な豊かさ、うるおいが走ることを好きにさせているのです。
●バリエーションを作ること、記録を残すこと
しかし、どんな楽しみも毎日毎日同じでは飽きてしまいます。走る仲間、場所、時間、内容にバリエーションをつけ、走ることに飽きてしまわないようにしましょう。また、手帳や日記の端でもかまいませんからその日に走った場所やコース、その時のタイムや脈拍数、体調等を記録しておくクセをつけるようにしましょう。この記録は後から好調だった理由、不調やけがをした原因の追及に役立ちます。また、レースに出た大会名、距離、記録等が良い思い出となります。これらのメモは過去を知るだけでなく夢を作る際にも役立つことでしょう。
Q9.
60歳からでも走り始めることはできますか?
●ランニングでは主役は自分。気楽にはじめよう
先に述べた様にランニングは“誰でも”できる数少ない運動の一つです。集団スポーツでは自分のペースで運動することは相手側や仲間に失礼になってしまいます。格技や体操等は高度な体力や技術を要します。ランニングは自分の体力や体調に合わせて行うことができます。いつも主役は自分ですから年齢による制限や経験の有無は全く関係ありません。
実際にマラソン大会をのぞいて見てくださればわかりますが、わが国でも毎年80歳代の方までがフルマラソンに挑戦し、多くの方が完走しています。それは、個人のペースでゆっくり楽しみながら走れるから可能なのです。
●40歳を超えれば個人の体力差が大きい
40歳を超える年齢になるとそれまであるいはそれからの生活状態によって個人の体力差が大きく開きます。したがって、誰でもが走れる体力の持ち主とは限りません。同年代の人と比べて自分が思うように走れないからといって恥ずかしがったり失望したりすることはありません。歩くことなら誰にでもにも出来ます。まずは歩くことから徐々に身体を慣らして行けば、いつかは必ず走り出せる時がくるでしょう。
●専門医によるメディカルチェックは必須
遅れてきたランナーになろうとする時は専門医によるメディカルチェックが必要です。たとえ医師から折り紙をつけられても、自分の健康は自分で管理する気持ちを持って下さい。そして走っている時には自分の体の声に耳を傾け、無理をしないことが肝要です。
特に心臓の健康管理は脈拍でもある程度チェックできます。ランニング中および朝目覚めた時の脈拍数を継続的に測り記録しておきましょう。その際、異常を感じたら専門医に相談してみましょう。
Q10.
フルマラソン大会に参加することはできますか?
●ゆっくりペースを守って少しずつ完走距離をのばす
これから走り始める方でももちろん可能です。ゆっくりランニングを楽しむヒトでも続けていると体力や気力の充実感を感じ、仲間のレース体験談を聞くに至って“よし自分もレースに参加してみよう”というようになるのが多くのランナーが辿る道です。
レースへの参加は5km、10km、ハーフと少しずつ距離をのばすようにして大会を選んでいきます。トップランナーは最初から最後まで全力で走りますが、皆さんは前述の表1を参考に一定の脈拍数(「ややきつい」程度がレーススピードの目安)をキープしながら走ります。あせらずゆっくりペースを守り、気分も表情もニコニコ感覚でレースに望めば初参加初完走は決して夢ではありません。
●「遅いあなたが主役」のフルマラソン大会を選ぶ
海外の大会では制限時間が8〜10時間のところもありますが、わが国のフルマラソン大会のほとんどは通過時間が厳しく制限され、時間制限のない大会はわずか3大会だけという状況です。そこで、「遅いあなたが主役」になれるビギナーにおすすめの大会を表2にまとめてみましたので参考にして下さい。
フルマラソンでは“ゆっくりランニング”が最適です。ゆっくり走れば走りながら沢山の仲間ができます。30kmを超えると筋肉疲労から脚が動かなくなります。その後は苦労が続きますが、ゆっくり走り続け完走を目指します。フルマラソンをゴールした時の感激は苦しさを2倍、3倍もの喜びに変えてくれるほど偉大です。気力と体力の充実を感じたら一度は挑戦してみることをお勧めします。